高山病 傾向と対策
高地に行くたびに高山病の辛酸をなめながら、このままおめおめと引き下がるのもシャクなので、高山病にまつわる私の体験をまとめておこうと思う。登山や氷河トレッキングではなく、一般的な観光に限って言えば、下記に挙げた対策は、経験上、そう見当違いでもないと思う。 高地滞在中、高山病を意識しないで済む人もいるし、私のように一部の症状でも重くなる人はむしろ少数派のようなので、過度に心配する必要はないと思う。ただ、日本ではまれな、特殊な環境だといった心構えや予備知識があれば、より安心して観光できるだろう。 一般的なハナシ 海抜3,000mあたりまで来ると、空気が薄い(酸素が少ない)ことが原因で、低酸素症、いわゆる高山病と呼ばれる様々な異常が起きる。高地に体を慣らしながら、時間をかけてゆっくり上がれば問題ないだろうが、例えば、ほとんど海面と同じ高さにある、ペルーの首都リマから飛行機でひとっ飛び、いきなり海抜3,400mのクスコに降り立った、なんていう場合、何らかの不調を感じる人は多い。山登りの経験や日ごろの運動の有無、年齢、性別などとは無関係で、何度も高地に行ったからといって慣れるものでもないらしい。 高地では、早足で歩いたり階段や坂道を上ったりすると、普段よりも早く息切れする。さらに、頭痛、吐き気、めまい、食欲不振といった不快な症状を、程度の差はあるものの多くの人が経験する。どうしても耐えられない場合は、低地まで降りなくてはならないだろうが、そうなる前に症状を軽減させる方法はあるし、ある程度時間が経てば高地に体が慣れてきて、自然と回復することも多い。 4年の間をおいて海抜3,400mのクスコに2回訪れ、どちらも同じような経験をした。海抜2,300mのメキシコ・シティでも、軽くて済んだが似たようなことがあった。これらの経験をもとに、高地到着を起点としたおおざっぱな経過をご報告しよう。
私の高山病の特徴は、軽めの頭痛と重い胃腸失調だ。頭痛が消えると決まってお腹にくる。食べ物の味が変に感じるとか、珍しく乗り物酔いしたとか、胃腸がおかしくなる前に必ず兆しがある。ただ、旅の疲れや水の違いといったものも、不調を重くしているだろうと思う。 過去の経験から、今回の旅行では気合い充填、万全を期した(・・・けど、やっぱり胃腸失調だけは重くなった)。 【保温対策】 高山病の症状を考えると、体を冷やすのは厳禁だろうと思う。常に体を暖かく保つために、吸汗性と保温効果の高い登山用のTシャツや、フリースのジャケットを持っていった。 ペルーは良質のアルパカ毛の産地なので、クスコでセーターを調達した。軽くて暖かいベビー・アルパカ毛100%のセーターが、110ソーレスだった(4,180円)。 【胃腸失調対策】 ペルーの食事はおいしくて量も多く、残すのがもったいなくて、つい、食べ過ぎてしまう。そこで、食欲が落ちている時は無理に外食せず、日本から持って行った下記の食べ物で軽く済ました。
食べ物以外では、胃腸の調子を整えることを目的に、市販の漢方胃腸薬を持って行った。私の胃腸失調は頑固で、下痢止めはまったく効かない。 【頭痛対策】 「お〜、いてぇ〜」と、呪いの言葉を口にすればごまかせるほど、頭痛は我慢の範囲内なので、特に薬は持って行かなかった。日本で市販されている鎮痛剤も効くそうだが、眠くならないタイプがいいらしい。眠くなると呼吸数が減り、それにつれて、ただでさえ少なめの体内の酸素量もますます減ってしまうからだそうだ。 【悪寒対策】 本当に寒いわけではなく、神経が狂って悪寒を感じるのだろう。理屈はどーでもいいからとにかく暖かく眠りたい、というわけで、yo!!が夜のサハラで快眠できたという、本格的な登山用寝袋(シュラフ)を持って行った。ちょっとかさばったが大正解だった。悪寒に悩まされた夜もすぐに体が暖まり、よく眠ることができた。 次のリストは、現地到着後の基本的な高山病対策だ。これだけでもけっこう有効だろうと思う。
「到着当日は安静に」と書いたが、観光しに来ているのだから、これがいちばん実行不可能かもネ(大いに心当たりがあるぞ)。 【コカ茶】 頭痛を緩和しようと食事のたびにコカ茶を飲んでは、1、2枚、葉っぱをかみかみしていた。飲んでしばらくは痛みが抑えられるが、効果の持続は1、2時間が限度のようだ。たとえ短い時間とはいえ、不快な鈍痛から解放されるのはありがたかった。 コカ茶、飲んどコカ?なんちて。 我がコカ茶道の師匠直伝、ホテルのセルフサービスで、手早くおいしくコカ茶をいれる方法を。マテ茶やカモミール茶などのティーバッグ(たいていティー・コーナーに置いてある)と、コカの葉を5、6枚カップに入れ、お湯を注ぐ。できあがり。 コカ茶はレストランやカフェでも注文できる。クスコでは1杯2ソーレス(76円)ほどだ。 ところで、チョコレート、キャンディー、クッキー、ティーバッグなどなど、いろいろなコカ製品が売られているが、日本も米国(日本〜ペルー間の経由地になることが多い)も、コカそのものはもちろん、コカ製品もいっさい持ち込みが禁止されている。
【野菜スープ】 体の芯から暖まる、消化がいい、ビタミン豊富、水分たっぷり。野菜スープは、高山病闘病中の理想的な食べ物といえる。クスコもプーノも野菜スープの種類が豊富だ。大きく分けて、澄んだお汁に具が浮いている「ソパ」(sopa)と、具を裏ごししたり、クリームを混ぜたりして白濁&トロリとさせた「クレマ」(crema)の2種類がある。 私のお気に入りはキヌアのスープだ。キヌアとは、各種アミノ酸をたっぷり含んだアンデス特産の穀物で、ぷりぷりしてとてもおいしい。食欲があまりない時も、お腹を壊して「しかばね」状態だった夜も、滋養豊富なキヌアで命をつないだと言っても大げさではないだろう。 【フルーツサラダ Ensalada de Frutas】 口当たりがよく、ビタミンもいっぱい。バナナ、パイナップル、パパイヤ、メロン、リンゴ、スイカ、いちごなど、地元でとれる新鮮なくだもののカクテルが、たいていのレストランやカフェで食べられる(右の写真)。クスコのカフェで12ソーレス(456円)前後。ヨーグルトやはちみつなど、トッピングも各種ある。 添乗員さんのいるツアーなら安心だろうが、個人旅行などでどうしたらいいか判断がつかない時は、まず、ホテルのフロントデスクか、現地ツアー中ならガイドさんに症状を話して、アドバイスを受けるのがいいと思う。相手の人は心得たもので、スペイン語や英語の単語だけでも十分理解してくれる。 日本同様、薬局には薬剤師さんがいて、きちんと症状を聞いた上で、適切な薬を選んでくれる。 次の表は、高山病の症状などをスペイン語にしたものだ。一部の読みについて、太字でアクセントをつけた。でも、ぐるぢび時は、いちいちこんなの見てらんないっす。
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