切り株 年明けてすぐだったと思う。苑の方がサクラの幹を木槌でこんこん叩いて回っていた。木槌の反響を聞きながら、木の内部に異常がないか確認していたのだろう。 昨秋から今冬にかけて、新宿御苑では真新しい切り株がたくさん出現した。サクラも生き物なので、病気にかかったり、根っこがキノコに蝕まれたりして弱ることがある。来苑者に倒れかかるような事故があってはいけないので、手当ての施しようがないとわかると、早めに傷んだ枝を落としたり、傷み方によっては根元から切るそうだ。 前シーズンのみごとな花やつややかな葉を知っているだけに、切り株になった姿を見るのは辛い。ただ、木がまだ元気なうちに枝を取り、接ぎ木で育てられていると知って、ほっとする。すでに立派に成長し、花をたくさんつける木もある。今年もそうした花が楽しめたし、これからも楽しませてくれるに違いない。植物のいのちをつなぐのは、経験や根気のいる仕事だろう。お世話をする方々のご苦労を思うと頭が下がる。 ショウゲツ
すぐ近くにある若い木No.9と、インフォメーションセンター南のNo.10は、ショウゲツとして育てられている。この春、どちらもたくさん花をつけた。切り株になったショウゲツが穂木(接ぎ木で、台木の上に接ぐ木のこと)だろうか。 サトザクラ 新宿御苑で私が知っているサトザクラはたった1本だった。今年の桜歩きで心残りを一つ挙げるとすれば、サトザクラの開花が見られなかったことだ。あとの祭りだが、切り株になったもの以外にサトザクラがあるのか、あるとすればどこに植わっているのか、開花時期の前に確認するべきだった。
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