ベレン地区 国鉄カスカイス線の電車に乗って、リスボン市の南西端に位置するベレン地区に出かけた。片道8分のプチ遠足だ。 テージョ川に沿って公園が広がり、歴史的な建物やモニュメントが点在する。大航海時代、大勢の探検家がアフリカやアジアを目指して出航した地として有名で、建造物も航海にゆかりの深いものが多い。 カスカイス線の電車 始発駅のカイス・ド・ソドレからカスカイス線に乗り、ベレン駅で降りた。平日はベレンに止まらない便もあるが、日曜日だったのでどの電車でも乗車できた。
ジェロニモス修道院 Mosteiro dos Jerónimos 1501年、ポルトガル王マヌエル1世の命によって、ジェロニモス修道院の建造が始まった。香辛料などの貿易で得た巨額の富が建築費にあてられ、その額、1年間あたり金70kgに相当したというけれど、いったいどれほどのお金なのか私には想像もつかない。マヌエル1世が亡くなったあとも建造は続き、着工から約100年後にようやく完成したという。 外壁、柱、アーチ・・・至るところに繊細な彫刻が刻まれている。場所によっては彫刻がてんこ盛りになっている。モチーフは草花、貝殻、人の顔、動物の頭などさまざまだ。未知の土地から船乗りが持ち帰った珍しい生き物もモチーフになっているそうだ。この優美な建築様式はポルトガル独特のもので、修道院の建造を始めた王の名を取って、「マヌエル様式」と呼ばれている。
修道院東部にあるサンタ・マリア教会には、インド航路を開拓したヴァスコ・ダ・ガマの棺が安置されている。見学当日はちょうど日曜日で、教会の入り口は日曜礼拝の信者さんで長蛇の列だった。ガマさんは歴史の教科書に太字で登場するほどの超有名人なので、日曜日でなければぜひともお参りしたかった。 ベレン伝統のお菓子 ジェロニモス修道院の東の道路を渡ると、スターバックス・コーヒーの向こうに青い日除けが見えるが、それを目印にするよりも、日除けの下にずらりと並んだ行列の最後部を目指した方が早いかもしれない。 1837年創業の老舗、青い日除けのカフェ「パステイス・デ・ベレン」の行列に30分近く並んで、修道院秘伝の製法による有名なパイ菓子「パステイス・デ・ベレン」を買った。1コ1.05ユーロ(約142円)だった。 近くの公園のベンチで包み紙を開いた。焼きたてで、まだほくほく熱い。薄いパイ皮が口の中でパリパリと気持よく砕けた。詰まっているのはカスタードクリームだろうか。ほんのり甘く、口溶けがいい。まだ時差に慣れず食欲がないはずなのに、いくつでも食べたくなった。 この小さなお菓子は大人気だ。カフェやスナック・バー(小さなカフェ)では、「パステル・デ・ナタ」の名前で売っている。ホテルの朝食バイキングにも毎朝並んでいた。 発見のモニュメント Padrão dos Descobrimentos ジェロニモス修道院の南西約500m。ヴァスコ・ダ・ガマがインドに向け出航したその場所に、帆船をかたどった巨大な記念碑「発見のモニュメント」がそびえ立つ。大航海時代の立役者と称されるエンリケ航海王子の没後500周年を記念して、1960年に建てられた。エンリケ王子像を先頭に、探検に関わった人々の像が続く。 エレベーターでモニュメントのてっぺんまで上がった。地上52mの高さというから、1階分4mとして、13階建てのビルの屋上といったところか。この日はあいにくの曇り空で、もやがかかり、見晴らしは今ひとつだったが、それでも西はテージョ川の河口から大西洋が、東は4月25日橋や丘の上の大きなキリスト像が見えた。
ベレンの塔 Torre de Belém 16世紀初め、リスボンの港を守る砦としてマヌエル1世が建てた。岸から川に突き出た形で建っているため、基礎部分は川の水に浸っている。私たち見学者は橋を渡って入場する。
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