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リスボン

陽気に物見遊山
Jolly Journey


「リスボン」もくじ

ご予約は90日前から

アラカルトミールの封かん
↑「お客さまが選んだおいしいお食事」。アラカルトミールのパッケージについている、思わせぶりな封かん。マイ・チョイスのオランダ料理、おいしかった。

KLMオランダ航空のエコノミークラスには、アムステルダム発の長距離便限定で、「アラカルトミール」という有料の食事サービスがある。5種類の中から好きなものを選んでオンラインで予約するのだが、Webの画面をいくら探しても予約ボタンが見つからなかった。サービスの説明やFAQを見てもわからない。道中もとことん楽しみたいのに、アラカルトミールが予約できないとはケシカラン。ついにKLMのカスタマーサポートに電話をした。

予約番号を告げ、「アラカルトミールの予約ボタンが見当たらないんです〜」と訴えた。電話の向こうでデータをチェックしているらしい音がしばらく続く。そして、運命の声が。嗚呼、今思い出してもこっぱずかしい。「アラカルトミールのご予約は出発の90日前から承っておりますので、お客様の場合、4月××日には予約ボタンが表示されるはずでございます」。旅行が待ち切れないこのお客サマは、出発の150日も前から機内食で気を揉んでいたのであった。

さて、この文章を書いている8月末、KLMのページをのぞいたら、アラカルトミールの注文方法が詳述されていた。「90日前から」も書いてある。気の早いお客さんは私のほかにも大勢いて、問い合わせが殺到していたのかもしれない。それとも、私が見落としていたとしたら、KLMさん、ごめんなさいまし。

オムライスさん

ケーブルカーを降りてトレル公園の手前まで来たら、ベレー帽をかぶった制服姿の男性に「ジャポニース?」と呼び止められた。「あっちに行ってごらん」と、公園とは逆の方向を指で示している。英語混じりのポルトガル語で、「オムライスの家だよ、緑色の建物だよ。見学無料だよ」と教えてくれた。「オムライスさんのおうち?」と尋ねたら、「そうだ、そうだ、オムライスだ」とうなずく。おとうさんを振り返ると、「オムライス・・・みたいだね」とつぶやきながらも、やはり妙だといった顔つきだ。服装や雰囲気から何となくその男性はお巡りさんで、アヤシイ人ではないと感じたし、私たちに何か日本にゆかりのあるものを知らせてくれているようなので、公園は後回しにして、教えてもらった方向に歩いて行った。

「緑色の建物」はすぐにわかった。ポルトガルでよく見かける左右対称のアパート風の建物で、真ん中に玄関のガラス扉がある。正面に立って見上げたら、整った書体の日本語があって驚いた。しかも、タイル画のアズレージョだった。

アズレージョに書かれている「モラエス」という名前を目にして、初めて「オムライス」と聞きまちがえていたことに気がついた。そんなわけないだろうと、何となく感じていたのだが。

モラエスの生家
↑ベレー帽の男性が教えてくれた建物。玄関の上にアズレージョがある。

モラエスの生家のアズレージョ
↑アズレージョに日本語で碑銘が記されている

帰国してから調べたところ、アズレージョに記されているのは、明治時代に外交官として来日し、故郷のポルトガルに帰ることなく日本で亡くなった、作家のヴェンセスラウ・ デ・モラエスであることがわかった。建物はモラエスの生家だった。モラエスは、当時の日本人の習慣を美風と称えてヨーロッパに紹介し続けたほか、専門の海事でも日本に大きな貢献のあった人物だそうだ。新田次郎・藤原正彦によって、評伝『孤愁 サウダーデ』も書かれている。碑銘の最後に「日本国 宇留野清華」の名前があるが、この人は書家らしい。アズレージョ自体は、リスボンのロータリー・クラブが記念に掲げたものだ。

モラエスの生家を教えてくれたベレー帽の男性だが、予想に違わずお巡りさんだった。トレル公園に隣接して司法警察の庁舎があり、同様の服装をした人たちが出入りしていた。このお巡りさんも、公園の開園時間を教えてくれた別のお巡りさんも親切だった。旅先で受ける好意はとりわけ身にしみてありがたい。

SIMカード

SIMカード
↑SIMカードのパッケージ。「ブロードバンド・モバイルカード 15GB インターネットアクセス用 3G・4G用」なのだ。

リスボンも東京と同じで、大きな駅にはモバイル・ショップが1、2軒ある。オリエンテ駅のお店で、Pocket WiFiで使うSIMカードを買った。プランは2種類で、確か、一定時間使いたい放題のプランと、時間制限はないがデータ転送量が15GBまでのプランだった。どちらも30ユーロ(4,050円)で、後者を選んだ。

その足で駅前のヴァスコ・ダ・ガマ・ショッピングセンターへ行き、休憩所のベンチに腰掛けた。さっそく、おとうさんがSIMカードのインストールを始めたのだが、iPhoneでユーザー登録をする段になって、何度試しても入力を受け付けないという。日ごろ、我が家のマシン構築を一手に引き受けるおとうさんだが、今回ばかりはどうやら難しく考えすぎているようだ。こーゆーことはシロートの方が案外うまくいくものなので、おとうさんからiPhoneを取り上げて、パスワードだけテキトーに設定してみたら、めでたく登録完了と相成った。シロートの勝ち、なのだ。

Pocket WiFi+SIMカードは接続が速く確実で、実に快適だった。思ったほど使わなかったので、かなり残っているはずだ。SIMカードに有効期限があったかどうか覚えていないが、もし、あったとしたら、切れる前にまたポルトガルに行きたいものだ。実現はユーザー登録よりはるかに難しいけれど。

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