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アルカトラズ島


サンフランシスコの2.4km沖合い、サンフランシスコ湾に浮かぶ小島、アルカトラズ島を見学した。クリント・イーストウッド主演の映画「アルカトラズからの脱出」の舞台にもなった、連邦刑務所のあった島だ。現在ではアメリカ合衆国国立公園局の管理の下、一般に公開されている。私たちが利用したピア33発着の見学ツアーは、同局の委託先企業が運営している。

このツアーの売りは、海上の刑務所という珍しさや景色の良さだけではない。音声ガイドといえば解説に終始することが多いが、アルカトラズでは受刑者と看守が代わる代わる登場して、ナレーターといっしょに案内役を務めてくれる。流血事件や脱走事件の話では、薄暗い牢獄に囲まれながら緊迫した展開にドキドキしてしまった。ショップで売っていたTシャツか何かに'Inescapable Experience'と書いてあったが、まさしく逃れがたい魅力あふれる、貴重な体験だった。

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アルカトラズ島へ

アルカトラズ島は人気の高い観光スポットで、日中はたいへん混み合うらしい。早朝便ならゆっくり見学できるというので、インターネットで08:45発の第1便を予約しておいた。往復の船賃、入場料、音声ガイド(日本語あり)込みで1人$30だった(3,690円)。クレジットカード決済が完了すると、登録したメールアドレスにPDF形式のeTicketが送られてくる。予約が必要なのは行きだけで、帰りの便は定員に空きのある限り現地で自由に決められる。

さて、観光当日、ピア33で朝ご飯にしようと思い、集合時間のずっと前の午前7時に着いたのだが、チケット売り場に長蛇の列ができていて驚いた。夏休みが終わってさほど混んでいないだろうと予想していたのだが。あらかじめチケットを手に入れておいてよかった。

↑アルカトラズ島ツアーが発着するピア33。画面右端にツアーの船が小さく写っている。

↑行きの船からサンフランシスコ市街を望む。もっと乗っていたくなるような、15分間の穏やかな船旅だった。

上陸

↑監視塔

↑監視台。鳥かごみたいだ。カモメが見つめているけれど、入りたいのかな。

↑監房棟。見学者は階段ではなく、画面右手の坂道を上がる。丘の上の塔は灯台。今も稼働している。

刑務所の暮らし



↑ベッド、明かり、トイレ、洗面台、質素な棚。監房の設備は生活に必要な最低限のものだけ(左上)。素行の良い受刑者には、趣味を楽しむ特典が与えられた。編み物を他の受刑者に教えてあげたら、みんなおもしろがって流行った、なんていう話も。

↑シャワー室

↑面会用の小窓

↑食堂

↑1963年3月21日の朝ご飯。刑務所が閉鎖された日付と同じ。連邦司法省の指示により、食事は内容も味もとても良かったとか。

↑看守の詰所

↑通信室

流血の脱獄未遂事件

1946年5月2日、脱獄を企てた受刑者6人が看守を襲って武器を奪い、銃撃戦の末、2日後に制圧された。「アルカトラズの戦闘」として知られるこの事件で受刑者2名、看守2名が亡くなり、のちに受刑者3名が死刑になったという。受刑者の投げた手榴弾が炸裂した跡が、床に鮮明に残っている。


未解決の脱獄事件

1962年6月11日に起きた脱獄事件は、映画「アルカトラズからの脱出」になったこともあり、あまりにも有名だ。脱獄囚3人は逃走中に溺死したとも断言できず、現在も行方不明という。案外、無事に生き長らえてアルカトラズ島ツアーに参加し、自分たちの脱獄を振り返りながら「いや、そこはホントはそうじゃないんだよ!」とかなんとか、心の中でもどかしく監修していたりして。

旅行前に映画で予習しておいたが、聞いてびっくり、見て二度びっくり。監房のベッドに横たわる張りぼての頭は復元されたものだと思うが、足元にぽっかり口をあけた通気口から、張りぼての本人がこっそり抜け出す姿を想像したら、看守さんには申し訳ないが、脱獄囚の知恵と行動力にあらためて感心した。と同時に、その知恵をもっと上手に活用していたら、ムショ入りすることなく別の道を歩んでいたかもと、知恵も行動力も欠けている私には惜しまれてならないのだった。

↑張りぼて、就寝中。洗面台の下に、スプーンでこつこつ地道に広げたという通気口が見える。

 ↑上の写真とは別の脱獄囚の監房。この通気口にも脱獄対応リフォームが。

 ↑脱獄に使われた通気口は、壁の中の空所に開いている。廊下の壁の一部がガラス張りになっていて、脱走の経路になった空所をのぞくことができる。

インディアンのメッセージ

1963年にアルカトラズ連邦刑務所が閉鎖されると、島は放置された。やがてインディアンがやってきて島を占拠し、連邦政府に対し先住民の権利を主張して抗議活動を行った。占拠は2年ほどで終了したが、その間にインディアンが書き記したメッセージが今も残っている。

↑桟橋すぐそばの建物

↑給水塔。歴史を風化させないよう、近年、サビだらけだった塔が国立公園局によって修復され、メッセージも復元された。

出所

11:00発の便でアルカトラズ島をあとにした。朝方はくっきり見えていたゴールデンゲートブリッジが、霧に足元を覆われていた。行く手のサンフランシスコの街は目と鼻の先。やっぱりシャバの空気はいいもんだぜ。

↑ゴールデンゲートブリッジ。橋桁のすぐ下まで霧が迫っている。

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