マーク・ノップラー 今回の旅行の一番の目的は、英国のアーティスト、マーク・ノップラーのライヴを聴くことだった。新譜'Tracker'の発表を機に世界ツアーが始まるというニュースを見逃したため、チケットを予約したのは発売後2、3日経ったあとだった。座席はすでにあらかた埋まり、後ろの方の席しか残っていなかったが、来日はまずなさそうなマーク・ノップラーの歌と演奏が生で聴けるとあって、公演の7か月も前から楽しみに待っていた。 ライヴ会場はサンフランシスコの東、バークリー市にある野外円形劇場「グリーク・シアター」だ。 カリフォルニア大学バークリー校 サンフランシスコの中心から高速鉄道BARTに乗ること30分。会場最寄りのダウンタウンバークリー駅で下車した。午後5時半。快晴の空に、夕日が赤い光を投げかけていた。 駅の近くで夕ご飯を済ませたあと、カリフォルニア大学バークリー校の敷地を横切って、会場まで近道した。同校は世界中から優秀な頭脳が集まる、米国屈指の名門校だ。UNIXシステムの一つ、BSDもこのキャンパスで開発されたというから、Linuxのお世話になりながら当旅行記をしたためている私は、本来なら足を向けて寝られないくらいなのに、この足で行きも帰りも敷地の真ん中をてくてく歩いていたのだった。
マーク・ノップラー バークリー公演 公演会場であるグリーク・シアターに到着し、長い行列のいちばん後ろについた。お客さんはマーク・ノップラーと同世代、しかもカップルが圧倒的に多かった。 グリーク・シアターはステージと観客席だけのシンプルな野外劇場だ。敷地のところどころに白いテントが立ち、軽食や飲み物を売っていた。夕ご飯時なので、どのテントもお腹を空かせた人たちでごった返している。コンサート会場で必ず見かける公式グッズ売り場が、ここではすぐに見つからなかった。人の流れからはずれた場所に、机を並べただけの小さな売店があったので、記念に写真集とTシャツを購入した。 観客席に屋根はない。雨の少ない土地では屋外でも困らないのだろう。暮れなずむすみれ色の空の下、乾いた涼風が吹き過ぎていく。ステージの屋根の上に三日月が輝いていた。
午後8時を少し回ったころ、英国国旗柄のスーツに身を包んだ大柄な男性がステージに現れ、開演を告げた。ここはアメリカ。英国国旗の登場に観客席は大いに沸いた。イギリス人は、アメリカに対してどこかに張り合う気持ちを持っているのだろうね。 以前からマーク・ノップラーのアルバムは好きでよく聴いていたが、アーティストから伝わってくる波動が違うとでも言ったらいいのか、ライヴで聴くことのすばらしさをあらためて感じた。 アンコール2曲を含めて全17曲。2時間半近いコンサートが終了した。マーク・ノップラーの、深く染みるように響いたアコースティックギターの音色が、今でも忘れられない。
日時:2015年9月18日(金)20:10開演、22:30終演
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