トップ旅の扉

 視力矯正手術LASIKを受けて 

2001年5月末に視力矯正手術LASIKを受けました。この体験記は、手術後の6月3日から7月1日にかけて執筆しました。

もくじ

なぜ受けようと思ったのか
手術前検査
手術の手順
手術当日
マイナス面とプラス面

なぜ受けようと思ったのか

私はついこの間まで、近視用の眼鏡を使用していました。「していました」という過去形はなぜか?実は、あのタイガー・ウッズと同じく、LASIK(レーシック)という視力矯正手術を受けたからです。

手術を受けて、9日目になります(きょうは2001年6月3日)。おととい、術後1週間検診を受診しましたが、手術前は右眼0.08、左眼0.1だった視力が、左右どちらも1.5にまで回復しました。裸眼ではぼやけて見えていた木々の葉が、術後、くっきりと見えた感動は、今でも忘れられません。

さて、LASIKを受けた動機です。私は以前からスクーバダイビングを楽しんでいますが、ダイビングの醍醐味といえば、海中のダイナミックな地形や、様々な生物を見たりすることです。近視の私は、度付きの水中眼鏡を使っていました。海の中ではそれで不自由ないのですが、潜り終わってボートに上がったあとは、やはり眼鏡が必要になります。器材やダイバーでごった返すボートの上で、眼鏡を取ったりはずしたりするのを、とても煩わしく感じていました。

それではコンタクトレンズにすれば、と思われるかも知れません。ソフトコンタクトは、手入れを十分にしないと、何かとトラブルがあると聞いていますが、こまめに手入れすることは、ずぼらな私には向いていません。ソフトコンタクトの場合、使い捨てレンズもありますが、長い目で見ると、非常にお金がかかります。

では、ハードコンタクトはどうかというと、1年ほど使ったことがありますが、異物感があり、長続きしませんでした(LASIKのための検査でわかったことですが、私は若干ドライアイの傾向があり、異物感はそのせいかなと思います)。

またコンタクトレンズは、ダイビングに出かけた時、水中、陸上ともに紛失するリスクが高いといえます。

このように、コンタクトレンズや眼鏡を使用する煩わしさから解放されたいという理由で、LASIKを受ける人は多いようです。

しかし、私もLASIKに関心はあっても、眼の手術ということで不安を感じていましたし、近視手術には健康保険が適用されず、全額自費なので(近視は病気ではないため)、なかなか決断できないでいました。

ところが、同僚が私よりひと月ほど前にLASIKを受け、視力が良くなって非常に快適であると聞き、私も受ける決心をしました。

その同僚がLASIKを受けたクリニックと同系列の、「南青山アイクリニック」をインターネットで検索して、Webページから資料請求しました。送られてきたビデオとパンフレットを見て、手術について大まかな状況を理解したのち、早速、手術への適否を調べる検査を予約をしました。

手術前検査

資料として送られてきたビデオでは、実際の手術シーンも若干出てきます。このシーンを見て、手術をやめてしまう人もいるそうです。眼の表面を、「マイクロケラトーム」という、小さなカンナのような器具でめくるのですが、人によっては、これが結構怖いかも知れません。

ビデオとパンフレットはわかりやすくまとまっていますし、無料なので、興味のある方は請求してみるといいと思います。次のアドレスに、資料請求のためのフォームがあります。私の場合、受け付け完了後、1週間程度で送付されました。

南青山アイクリニック眼科情報センターのページ
http://www.minamiaoyama.or.jp/

この資料を見て数日後、検査を予約するために、最寄りの南青山アイクリニックに電話しました。この時、裸眼視力、眼鏡やコンタクト使用の有無などについて尋ねられます。

さて、検査ですが、視力、眼圧、眼底の検査、角膜の厚みを計る検査、医師の診察などいろいろとあるので、2時間から2時間半ぐらいかかります。また検査中、眼の調整機能を麻痺させる目薬をさすので、検査後も何時間か見えにくくなりますから、その日は半日以上つぶれると思った方がいいでしょう。私の場合、午前9時半に検査が始まり、終了したのが11時半でした。そのあと出勤したのですが、普通に見えるようになったのは、午後3時半前後でした。物がまったく見えなくなるわけではないのですが、目を使う細かな作業は無理ですし、車の運転もできません。

ところで、この日は検査だけでなく、専門スタッフによるコンサルテーションがあります。角膜の構造、近視や遠視、乱視が起こる仕組み、手術の方法、手術を受けるにあたっての注意、手術によって起こる可能性のある合併症や、LASIKのマイナス面についての説明も受けます。また、現在かかっている病気や常用している薬、なぜ手術を受けようと思ったかについても質問されます。

検査とコンサルテーションに問題がなければ、手術の条件が整ったものと判断されます。そうなれば、あとは自分の決断だけです。私は検査当日、手術を予約しました。手術の数日前にもう一度検査があり、そちらもいっしょに予約しました。

手術数日前の検査は、やはり視力を中心にいくつかありますが、最初の時ほど種類は多くありません。

さて、他の手術方法に比べ、LASIKは矯正可能な範囲が広いけれども、次のような理由で、手術できない人もいるようです。

  • 白内障など、眼の病気がある人
  • 角膜の厚さが十分でない人
  • 弱視の人
  • 医師や専門スタッフの説明を理解できない人

最後の「医師や専門スタッフの説明を理解できない人」とは、どうやら「理解しようとしない人」のようです。「金を出すからとにかくやってくれ」みたいな人は、手術を断られることもあるとか。

LASIKの手術自体は、眼科専門医でなくても可能なのだそうです。しかし、LASIKを受けるにあたって眼の病気がないかなど、眼科専門の医師にきちんと適否を診断してもらった方が安心だと、私は考えています。

手術の手順

手術の手順は、大体以下のような感じです。

  1. マクロケラトームというカンナのような器具で角膜の中央部を削り、フラップ(弁状片)を作る。
  2. フラップをめくる。
  3. エキシマレーザー(角膜の表面を整える特殊なレーザー)を照射する。
  4. フラップを元に戻す。

エキシマレーザーを照射することで、角膜の曲がり具合いを整えます。その結果、光の屈折も変わるので、眼鏡と同じような効果がもたらされるのだそうです。レーザーの照射時間は、近視や乱視の度数などによります。

LASIKで特に優れている点とは、エキシマレーザーを照射したあと、「フラップ」と呼ばれる切片を元に戻すことにあるようです。フラップを元に戻すことで、レーザーを照射した角膜の表面を、自分自身の組織で保護することができます。フラップは自然に接着するそうです。

器具による圧迫感は別として、麻酔のおかげで手術自体には痛みはありません。手術後も痛みはあまり残りません。手術の翌日には、すでによく見えるようになっています。私の場合、手術翌日の検査で右眼が1.0、左眼が1.5でした。

ところで、視力矯正手術はLASIK以外にもあります。手術前のカウンセリングでもちょっと説明があったので、あげてみます。

PRK

LASIKと同じエキシマレーザーを照射しますが、フラップは作りません。角膜上皮を取ってしまうため、上皮が再生するまで、数日間保護用のコンタクトレンズを使う必要があるそうです。また、視力が安定するまで時間がかかるので、手術は片目ずつ行います。手術には多少痛みを伴うようです。

RK

メスで角膜に数本の切れ込みを入れます。矯正可能な範囲が狭いそうです。

視力矯正手術の種類は、このほかにもまだあるようですが、超高度の近視向きだったり、まだ一般的ではなかったりするそうです。

手術当日

手術を受けるにあたって、守らなくてはならない事柄がいくつかあります。

  • ソフトコンタクトレンズなら2週間以上前、ハードコンタクトレンズなら4週間以上前に、使用を中止します(眼鏡は使用可)。
  • アイメイクは2日前から中止します。
  • 手術当日は終日化粧をしたり、香水や整髪料を使ってはなりません。

局所的な手術とはいえ、緊張も加わって疲れるので、手術前の週は、できるだけゆったりと過ごす方がいいと思います。特に目は疲れさせない方がいいでしょう。私の手術は5月21日の午後でしたが、前日は早めに寝て、当日は勤めを休みました。

手術の日は、視力など若干の検査があるので、手術の予定時間よりも早目に病院へ行くことになります。検査が終わると、手術用の待合室に行って、サングラスを選びます。手術後1週間、外出時に眼を保護するために、このサングラスをかけます。サングラスは、数種類の中から好みのものを選ぶことができます。

そのあと、術後1週間使用する保護用眼帯と点眼薬について、看護婦さんから説明を受けます。眼帯は就寝時に装着します。点眼薬は、感染予防の目薬、炎症を抑える目薬、乾燥を防ぐ目薬の3種類です。説明のあと、手術の緊張を和らげるために、精神安定剤を1錠飲みます。

次に、診察室に入って、執刀医の先生から説明を伺います。私は、近視手術や角膜移植の権威で、テレビや雑誌などでも有名な、坪田先生に手術をしていただきました。

先生の説明が終わると、再び待合室で待つことになりますが、この日は取材があったらしく、坪田先生と手術直後の患者さんへのインタビューが聞こえてきました。

さて、数分後、手術の準備をするために、カーテンで仕切られた場所に入りました。以前、看護婦さんから手術室は寒いと聞いていたので、持ってきたトレーナーを着ました。この部屋で目の周りの消毒と、目薬による麻酔を受けましたが、麻酔をしても、目が見えなくなるわけではなく、ちょっとボーッとする感じです。

さて、いよいよ手術です。看護婦さんに案内されて、手術室に向かいます。かなり緊張しました。手術台に乗った気分は、まな板の上の鯉という感じです。

手術台の近くにアームがあって、それを操作しながら、看護婦さんや技師の人たちが慌しく動いていました。

先生がいらっしゃると、手術が始まります。多くの場合、利き目(「利き手」の眼バージョン)から手術するそうで、私の場合は右眼からでした。まず、目を大きく開くための装置が取り付けられます。この装置で目を開けられた時、ちょっと痛くてどきっとしました。そのあと、マクロケラトームを使ったフラップの作成に移ります(「3.手術の手順」参照)。

LASIKで何が恐いかというと、一連の手順が見えてしまうことでしょうか。まるで、ボーグ(「スタートレック」に登場する、機械と生命体が一体化した宇宙人。人類を自分達の種族に同化しようとする)に同化されるみたいな気分です。先生から、「力を抜いてください」と指示されますが、実際、力を抜くのはなかなか大変でした。

それでもどうにかフラップの作成まで終わりました。フラップをめくると、次はレーザの照射です。

レーザの照射中、眼を動かさないようにするために、赤い光を見つめるのですが、フラップがめくれた状態では、ぼやけて光がよく見えません。とにかく意識して眼を大きく開きながら、先生の指示に従って視点を据えていれば、それほど難しくありませんでした。それでも、何度か眼が動いてしまったので、その都度照射が中断されました。結局、右眼の照射時間を合計すると、25秒ぐらいだったと思います。技師の方が、レーザーの照射時間をカウントダウンしていたので、時間がわかりました。

右眼のフラップを戻すと、すぐに左眼に移ります。左眼のレーザの照射時間は、15秒ほどでした。右眼に比べて短時間だったこともあり、眼が動かずに済み、カウントダウンが途切れることはありませんでした。

両眼とも終わり、手術台の上で少し待機したあと、手術室のすぐそばの検査台に移りました。先生がフラップの状態を診察されて、手術は終了です。手術直後はどうしても眼が見えにくいので、希望により、しばらく休憩室で休ませてもらうこともできます。あるいは、すぐに帰宅しても構わないそうです。

こうして無事手術が終了しました。

マイナス面とプラス面

手術を受けた日の夜は、都内のホテルに泊まりました。帰宅時間が小田急線の通勤ラッシュにあたり、大事をとったためと、翌日は朝から検査があったからです。

手術当日の夜の入浴は、首から下のシャワーなら可能ですが、湯船には入れません。翌日は、先生から許可が出るまでは洗顔してはなりません。

手術翌日は、視力などの検査と診察を受けましたが、特に問題ありませんでした。この時点での視力は、右眼1.0、左眼1.5でした。現在は両眼とも1.5です。矯正する前、右眼の方が悪かったので、右眼は視力が安定するまで時間がかかったのかもしれません。

数週間はかなり眼が疲れやすく、ちょっと腫れぼったいような感じが続きました。手術して最初の週は、ドライアイがひどく、痛みを感じた日もありましたが、見え方はとてもいい感じでした。

さて、LASIKといえども万能ではありません。次のように、いくつかマイナス面もあります。

【手術代と検査費用で、50万円+アルファかかる】

決して安い金額ではありません。自分が本当に眼鏡やコンタクトから解放されたいと思っているかどうかが、LASIKを受ける重要な判断基準だと思います。

【しばらく眼が疲れる状態が続く】

しばらくの間ドライアイになったり、眼が腫れぼったくなって、眼の疲れを感じます。でも、どちらも徐々に回復するので、しばらくの辛抱です。

【近くが見にくくなる】

近くを見るとぼやけたり、以前のように視力の調節がスムースにいかないことがあります。ただ、LASIKでは、遠くを見るための視力を良くするだけでなく、本を読む程度の近距離で物を見ても不具合が生じないよう、手術前の検査をもとに、総合的に視力が調節された上で手術が行われるので、例えば読書をする時も、ごく普通に本を離して読めば、何ら問題ありません。手術前に比べると、私も近くが見えにくくなりましたが、次第に慣れて、今ではほとんど気にならなくなっています。

【夜、光がにじむ】

慣れれば問題ない、という人が多いようです。実際、私も慣れました。LASIKを受けた知人は車好きで、夜もよく運転しますが、やはり慣れれば問題ないと言っています。

【老眼が出やすくなる】

近視手術をしなくたって、いつかは老眼になるものだと思えるなら、この点は気にならないでしょう。老眼を矯正する手術も研究が進んでいるようなので、いずれLASIKのように、老眼も簡単に治るようになるかもしれません。

マイナス面はこんなところでしょうか。

私はLASIKのおかげで良い視力が得られましたが、ほかにもLASIKを受けてよかったと思うことがあります。それは、眼に関する知識です。LASIKの手術を受けるまでは、近視や乱視がどんな仕組みで起こるのか、全然知りませんでしたし、角膜が複数の組織から構成されていることも、もちろん知りませんでした。こういった知識が得られると、これからは眼を大切にしようなんて、思ったりもします。

また、私はサングラスが好きなのですが、今後は視力が悪いことを気にしないで、好きなサングラスを選べるようになりました。

それと、物を凝視するくせがなくなったせいか、眼がぱっちりして、目付きも良くなったそうです。

トップ旅の扉